Scxxxers is...

散文その他。全て読み切りです。

8番目

今、また東京に居てて、今回は高速バスに乗ってこっち来たんやけど、
この高速バスってのが値段が安いだけあってめちゃくちゃ席が狭くて座り心地が最悪。そのくせ車体が真っ赤で、なにやっすいくせに情熱的なレッドやねんもっとひっそりしてます感を出せよ濃紺にしろ濃紺。
この前バス予約するときにちらっとネットで見たらパトカーに追い掛けられながら高速爆走してたとか、運転手が全員黒人やとかわけのわからん評判がたってたのでちょっとドキドキしながら乗車した。どうせあれやろそんなバスやからきっと客層も最低なんやろーなとか不安やったんやけど乗客はわりと普通でまあ、右前のひとが乗ってからひたすらモンキーバナナ食べ続けてるくらい。べつにええやんヘルシーやん。あと通路挟んで右側がカップルやねんけど一時間くらいは大人しくしててんけどそのうちなんかいちゃつきだしてしまいには寒くもないのに毛布かけてなんかごそごそしてる。ここでまたおれ怒ると思うやろ?
はあああああ?このアホカップル公衆の面前でなにしてんねん!こっちは寝たふりしてるけどしっかり目撃しとるんじゃい!とかゆー思てんねやろ?いやいや。おれはそんなことでは怒りませんから。心に余裕を持たなあかんよね。しまいには男の膝に掛かった毛布ん中に女頭つっこみだしたりしてかなりエキサイトしてる模様やけど。おれは意外と大丈夫。ちょっとマイケル・ダグラスに病院紹介してもらえよ、って思うくらい。ただ途中サービスエリアで『果汁グミ』買ってバス戻ったら真隣のくたびれたスーツ着たおっさんが既に『果汁グミ』食ってたとゆーアクシデントにみまわれたけどな。自分のことは思いっきり棚上げしてゆわしてもらうと、おまえなんでええ年してチョイスしたお菓子が『果汁グミ』やねん。店いろいろ食べるもんあったやろ?おっさんやったらスルメとかサラミとか柿の種とかそーゆー大人の食べ物がなんぼでもあんのになんで可愛らしいグミやねん。しかもたち悪いことに、おれピーチ味買ってんけどここで逆におっさんもおんなじ味やったらまだええで?中途半端におっさんグレープ味買ってたからな。こんなもんなんかの拍子にひとつ交換みたいな雰囲気になってもいややん?おひとつどーですか、とか一番避けたい事態やん?結局、おっさんのせいでずっとポケットの中で果汁グミ握りしめてた。
幸先悪いスタートだぜ。なんて思いながらみっともない赤い箱でおれはたくさんの悲壮感と少しのユーモアと一緒に運ばれて行ったんだ(そう、これはドナドナへのオマージュ)。
大嫌いな東京。
意志に反してバスは東へ。
このバスを何かのメタファーになぞらえることは造作ないことだ。
だけれどおれはそんな安易なことはしない。 fin