Scxxxers is...

散文その他。全て読み切りです。

22番目

いつかの或る一日。

夕方、久々にCD買いに行った後ふらふら散歩がてらに歩いていると駅前で放置自転車の撤去が始まっていた。おれも自分のものを持っていかれたことがありそれも一度や二度ではないので自然と足が止まる。
車体の横に市のマークをつけた大型トラックが道路脇に停止すると荷台の大きなドアが開き中からぞろぞろと(100人以上いた)、紺色の作業服に身を包んだ中年の男たちが意味不明の照れ笑いを湛えながら降りてきた。ユニフォームの背中には大きく黄色い文字で、「あきまへん自転車放置」と豪快な書体でロゴがあしらわれている。全員いそいそと降り立つと、トラックは短くクラクションを鳴らして、パラシュート部隊を降下させた後に引き返して行く軍用機さながらに大きなエンジン音を響かせながら姿を消した。すると中年たちはそれが合図かのように一斉に、乱雑に並べてある放置自転車に群がって、それらについてある鍵や鎖を様々な器具で壊し始める。その手つきはおっさん達が素人丸出しだということを如実に表していた。そして、皆それぞれお気に入りの自転車に乗って(実際、サドルに柔らかそうな毛糸のクッションがついた自転車の乗車権を巡りちょっとした諍いも起こっていた様子だ)、約100台が南西の方向に揃って去って行った。2,3人あぶれた中年が二人乗りで去って行った。完全なる渡り鳥のそれ。時間にして20分ほど(楽しい出来事は早く過ぎ去るように感じるので、もしかしたら25分ほどだったのかもしれない)だろうか。
もう一つ用事を済ませてマンションの入り口に「4日の夜、断水します。10時~5時」の張り紙が貼ってあったのでそれを読んだ。実際もっと丁寧且つへりくだっていたけれどおれは簡略の技術を使ったのだ。そんなことよりぐだぐたしてたせいで今現在9時PM!おれはさっとエレベータ-に乗ると素早く10階のボタンをプッシュ、軽くさりとて確実にプッシュ。EVが目的階に着くやいなや奥から二番目のドアの前目掛けてダッシュ、近所迷惑なのでそろっとダッシュ。ポケットよりキーホルダーを取り出すと30種類足らずの鍵の中より迷わずチョイス、言い換えればピックアップさらに言い換えてセレクトすると鍵穴にするりと差し込んで右に半回転、そして手首のスナップに拠って逆に半回転すると開錠。真っ暗な部屋で泥棒対策に念のため「にゃー?」と一声かけて、先月買った茶色色のプレーントゥの靴脱ぎ捨てロビー兼キッチン兼ベッドルーム兼作業場の言っちゃえばワンルームに上がり込もうとしたら何がどうなったのかどこかに膝を打ち付けてあ痛たたたたっって言いながら電気を点けて涙目でふと、カレンダー見ると、凝視すると、今日3日って。おい。
おれはふと生クリームを使用しないバージョンのカルボナーラが食べたいなと思う。  fin